感想「同志少女よ、敵を撃て」

感想文

  • 第11回アガサ・クリスティー賞受賞
  • 2022年本屋大賞受賞
  • キノベス!2022 第1位
  • 第166回直木賞候補作
  • 第9回高校生直木賞候補作

『同志少女よ、敵を撃て』は、逢坂冬馬さんのデビュー作品であり、名だたる賞を受賞、またはノミネートされた傑作です。

一体どんな物語なのか。あらすじと共に私なりに感じた魅力をお伝えしたいと思います。

序盤のネタバレ(本の説明文に書いてある程度)が含まれますのでご注意ください

こんな人にオススメ
  • 戦争小説に興味があるけれど重厚すぎる話には抵抗がある人
  • 女性が活躍する物語を読みたい人
  • 直木賞候補、本屋大賞受賞作品に興味がある人
  • 評価がいい理由をざっくり知りたい人

あらすじ

この物語は第二次世界大戦のドイツVSソ連軍の戦争中、ソ連軍の女性狙撃手として戦ったセラフィマ達の生き様が描かれています。

物語の序盤は、まず主人公である少女セラフィマの故郷の村がドイツ軍に襲撃されるところから始まります。

時は独ソ戦が始まった頃です。

セラフィマは母エカチェリーナと2人暮らしをしており、2人は村唯一の猟師です。

この日も、2人は鹿を仕留めるために村の近くの山へ入山します。

しかし猟の帰り、山から村へと続く道から見下ろすと村の様子がおかしい事に気づきます。

ドイツ軍が村を襲っていたのです。

2人は地に伏せ身を隠します。恐怖に怯えるセラフィマの横で、同じように恐怖の中にいながら、母エカチェリーナは猟銃でドイツ軍を狙おうとします。

しかし、エカチェリーナは、ドイツ軍の狙撃手(スナイパー)に逆に撃たれて絶命します。そしてほぼ同時に村人達全員も殺されます。

その後、セラフィマ自身もドイツ軍に殺される、という寸前。

赤軍がやってきて、セラフィマは一命を取り留めます。

セラフィマを救った赤軍の女性隊長イリーナはセラフィマに言いいます。

「戦いたいか、死にたいか」

自分以外の村人も、母も殺され、セラフィマは絶望の中にいました。

しかしイリーナが、母の亡骸を踏みつけ侮辱したこと、村人の亡骸諸共火を付けたことにより、セラフィマの絶望は怒りへ変化していきます。

セラフィマは狙撃手になることを誓います。

母を撃ったドイツ人狙撃手を殺すために。

母の遺体を焼き払ったイリーナを殺すために。

り、セラフィマの絶望は怒りへ変化していきます。

セラフィマは狙撃手になることを誓います。

母を撃ったドイツ人狙撃手を殺すために。

母の遺体を焼き払ったイリーナを殺すために。

感想

この物語の中核を担うのは、ほぼ女性なのです。

ソ連では女性が戦地へ赴き、男性と同じように戦っていた。

その部分に焦点を当てた話なのです。

戦争に狙撃兵として参加する(せざるを得ない)女性という、あまり見られない視点から書かれています。

良かったところ

・緻密な戦争描写

地形、扱う武器の名称、戦局の流れを裏付ける当時のドイツ軍ソ連軍の戦力状況が事細かに記されています。

出てくる武器の名称を画像検索すると、現れる戦車やライフルに一気に生々しさを覚えます。

生死を分つ極限状態が続く中、登場人物達がどんどん疲弊していきます。

戦争は人を、いかようにも変えてしまう。

そんな描写もありました。

戦争は罪深いものだと、改めて感じました。

・魅力的な登場人物

主人公を含め、女性陣全員が魅力的です。

お人形のような見た目のシャルロッタ。

天性の銃の腕を持つカザフ人のアヤ。

ウクライナ人のオリガ。

個人的にはオリガが特に印象に残っています。

彼女を主人公としてみたこの話をもう一度読んでみたい、とそう思います。

また、主人公の宿敵として描かれるイリーナ。

イリーナは当初冷徹な印象でしたが、物語が進むにつれて徐々にイメージが変わってきます。

そしてもう1人の宿敵であるドイツ人狙撃手イエーガー。

この人物は物語の中で掘り下げられないと思っていたので、彼の背景が割と掘り下げされていて少し驚きました。

他にも魅力的な登場人物がたくさん出てきますが、上記含め全員に対してあまり思い入れをしない方がいいです。いつどうなるのか分かりません。

・エンターテインメント性

史実に基づいた話の基盤とその上に施されたフィクションのエンターテイメント性がとても良かったです。

最終章、主人公と宿敵との文字通り命をかけたやりとりは圧巻でした。

最後も、こうなるのか、と予想外の展開でした。

流石に本屋大賞とるだけのことはあります。

読んだ後はしばらくこの物語の余韻に浸っていました。

・ナレーションの語り

・Amazonのオーディブルで聞いた感想です

シャルロッタの声とイリーナ声の切り替えがすごくて、正直同じ方が演じているとは思えなかったです。

女性陣のやりとりは声の可愛さも相まって、戦争小説特有の重さが薄まる場面もあります。

その軽さが読みやすさにつながり、ある種ライトノベルのような部分があります。

そこが好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、私は好きです。

ロシアの人名は長くて馴染みがないかもしれませんが、読み進めていくうちに、いつの間にか覚えてます。

最後に

この物語は、戦争をテーマにしているだけのこともあり、初っ端から辛い描写が続きます。

そして中盤以降、思い入れのある登場人物の誰が戦死してしまうのかという不安にもなります。

しかしこの作品は、戦争という状況下の中で懸命に生きた少女達の生き様を五感で感じられる物語です。

ちょうど2022年8月時点で、ロシアとウクライナがの間で戦争が起こっています。

そういう世界情勢も含めて読んだときに非常に考えさせられる、そんな内容になってます。


同志少女よ、敵を撃て
*本タイトルは、音声差し替え修正済みです。(2022年7月25日更新) 【2022年本屋大賞受賞!】 キノベス! 2022 第1位、2022年本屋大賞受賞、第166回直木賞候補作、第9回高校生直木賞候補作   テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で続々紹介!   史上初、選考委員全員が5点満点をつけた、第11回アガサ・ク...

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